社員数の少ない中小零細企業では、経営計画をつくらないケースが多くみられます。
中小企業庁の2020年「中小企業・小規模事業者における経営課題への取組」では、以下のようなデータも発表されています。
【経営計画等の策定の有無】
- 小規模事業者…策定している47.5%|策定していない52.5%
- 中規模企業…策定している69.6%|策定していない30.4%
(参考元:中小企業庁:2020年版「小規模企業白書」 第3部第2章第1節 中小企業における現状把握及び経営計画策定の実態)
上記のように、小規模企業ほど経営計画をつくらない傾向にあります。
なかには「経営計画は大手だから必要なんでしょ?」と考えている人もいるかもしれません。
しかし「中小企業だから必要ない」ということはありません。
そこで今回は、中小企業にも経営計画が必要な理由について解説します。
中小企業に経営計画が必要な理由
中小企業に経営計画が必要な理由を端的に言うならば「目標達成」のためです。
そもそも経営計画は、会社がどのような方向に向かっていくのかを示すものです。
以下で、より具体的に解説していきます。
-目標達成に必要な行動をするため
経営計画をつくっておくと、目標を達成しやすくなります。
経営計画がないと、場当たり的な行動になりがちです。
たとえば、集客のためにSNSを活用していこう!と意思決定したとします。
しかしどのような施策でも、初めてすぐに効果が出ることはありません。特にSNSの場合、継続的に投稿し、アカウントの信頼度を上げていくことが必要なので、少なくとも数か月間は運用しなければなりません。
しかし、人は直前に起きたことに引っ張られやすい生き物なので、SNSに対してクレームやアンチがきたとすると「うちはSNS向いていないのかもね」「SNSはやっぱりやめようか」という判断をしてしまいがちです。
これでは本来の目的である集客が実現できなくなります。
経営計画を策定しておけば、このような場当たり的な行動にはならず「元々こういう目的だったから〇ヶ月は続けないといけないよね」と冷静な判断を行うことができます。
-従業員との意思統一を図るため
従業員を雇用しているのであれば、経営計画は必須だと考えてください。
経営計画がないと、会社の向かっていく方向性や、理念の共有ができないからです。
仮に、昔からの友人数名で会社を立ち上げたのであれば、阿吽の呼吸でなんとなく意思の疎通が図れているかもしれません。しかし、新しい人材を採用する場合には、経営指針や理念の落とし込みが必要になります。
その落とし込みの道具となるのが、経営計画書なのです。
ただし、ここで重要になるのが従業員目線にたって、わかりやすい表現にしてあげること。
単に「いつまでに売上を倍にします!」だけでは、従業員は「それって自分にどんないいことがあるの?」と自分事と捉えられず、モチベーションが上がりません。
しかしたとえば「いつまでに売上を倍にする。そうなると管理職も増えるし、従業員の給料も上がる」とまで落とし込めば、会社の成長すると、自身にもメリットがあることが分かります。
経営計画の正しい考え方
経営計画を作るメリットとして、「資金繰り(資金調達)」「利益の増加」があると言われます。
しかし当然ながら経営計画をつくっただけで資金繰りがしやすくなったり利益が増えたりするわけではありません。
以下で、それぞれの正しい考え方について解説します。
-経営計画で資金が調達しやすくなる?
あるかないかでいえば、経営計画があったほうが資金は調達しやすくなります。
資金調達相手の金融機関やVCにとってもっとも嫌なのは、資金を提供した相手の業績が悪化し、望んでいたリターンが得られないことです。
経営計画があると、どのような道筋で目標を達成していくのかが分かるため、金融機関やVCにとっても、安心材料となります。
ただし「売上を2倍にします」といったレベルではなく、どのような方法で売上を2倍にしていくのかといった解像度の高さが求められるのは、言うまでもありません。
-経営計画で利益は増やせる?
経営計画をつくることが、結果的に利益の増加につながることは多々あります。
経営計画は利益を増やすための具体的な施策を考えるためのものです。
たとえば「利益を増やす」といっても、売上を伸ばすのか経費を抑えるのかによってアクションプランは異なります。
漠然とした数値計画だけでなく、具体的に何をやって、それによってどの指標がどの程度改善されるのかまで落とし込まれているのが、経営計画だと考えてください。
さらに、各指標の追いかける方法まで決まっていて、はじめて成果につながる経営計画だと言えます。
ですので「経営計画をつくれば利益を増やせる」といった極端な考え方は誤りといえます。
経営計画の注意点
経営計画は、改善も必要ですから「内容を変更しても良い」と捉えている方も多いかと思います。
確かにアクションプランについては変更しても問題はありません。
ただし、売上や利益の目標を変更することは、おすすめしません。
これは単純に、目標を安易に下げると、それが悪い習慣として、会社に残ってしまうからです。
「目標に届かなそうだからこの位に下げようか」といった文化の会社と、「どうにかして目標を達成したい」という会社であれば、当然後者の方が強い会社と言えます。
ですので、「内容を変更しても良い」という言葉に甘えて、コロコロと変えないようにしましょう。
まずは形にすることから
経営計画の必要性は、実際につくって運用してみないと分からないかもしれません。
なぜなら、大抵の経営者は経営計画が頭に描かれているからです。頭の中で描いているから「文章化された経営計画に落とし込む必要はない」と感じているのではないでしょうか。
ただ、その考えを経営計画として落とし込むことで、より具体的な施策を考えられたり、目標達成に向けたアクションプランを練ったりできます。
ですので、まずは一度、簡単にでも経営計画をつくってみることをおすすめします。
もし、「つくってみたいけどどうすれば良いかわからない」といった場合は、一度弊社にご相談ください。
相談は無料ですので、お悩みを伺いながら、どのような形で弊社がお力になれるかをお伝えします。
プロフィール
稲葉友輔
代表取締役/中小企業診断士
1978年、神奈川県横浜市に生まれ、中国とニュージーランドへの留学を経験し、2005年に外資系化粧品会社に入社。
外資系化粧品会社在籍時の2013年に中小企業診断士資格を取得したことがきっかけで、企画部に異動。
その後、外資系企業2社、国内上場企業1社で、合計9年間企画業務に携わる。
2022年1月に独立し、2023年8月に株式会社ASSEMBLEを設立。
現在は、経営企画部時代の、経営計画やプロジェクト推進にまつわる様々な経験を活かし、経営計画の策定からアクションプランの推進サポートまでをカバーするハンズオン支援と、経営計画を自分でつくるためのオンラインスクールを提供している。
主なクライアントは卸売業、OEM化粧品メーカー、飲食業、太陽光発電業、イベント業、IT業、不動産業、商工会議所など、幅広い業種をサポートしており、中小企業診断士協会での講演も多数行っている。