管理部門でもKPIはここまで具体化できる


KPI管理というと、営業やマーケティングなど、売上に直結する部門のものだと捉えられがちです。

売上や成約率といった指標は営業部門に設定されている一方で、
人事・総務・経理といった管理部門については、明確な指標を持たないまま仕事が進んでいることも多いです。

この状態だと、各部門がどこを目指して仕事をすればよいのかが揃いません。

営業は指標に沿って動いているのに対して、管理部門は何をどの水準までやるべきかがはっきりしないまま業務が進む場面が出てきます。

その結果、部門ごとに仕事の進め方や判断の基準にばらつきが生まれます。

会社として目標を達成するためには、営業だけでなく、各部門がそれぞれの役割に応じた成果を出す必要があります。

そのためには、管理部門についても、何をもって成果とするのかを指標として定めておく必要があります。

管理部門は、あらかじめ決められた指標に沿って仕事をするというよりも、日々の業務を回しながら状況に応じて判断する場面が多くなります。

その中で、何をどの水準までできていれば良いのかがはっきりしないまま仕事が進むことも少なくありません。

こうした状況では、

  • 同じ業務でも判断が人によって変わる
  • どこに手を入れるべきかが分からない
  • 目の前の業務に追われて優先順位が後ろにずれる

といったことが起きやすくなります。

つまり、業務そのものに問題があるというよりも、何をもって良しとするのかが定まっていない状態です。

このあと整理するKGI・KSF・KPIは、こうした状態を揃えていくための考え方です。

KPIはどのように設定するのか

KPIは単体で考えるものではなく、次の順番で考えることが需要です。

KGI → KSF → KPI

この順番で考えることで、

「何を目指すのか」
「どこに手を打つのか」
「それができているか」

を一貫して整理できます。

KGIって何?

KGIは、最終的に達成したいゴールです。

会社全体であれば、営業利益や売上が代表的な指標になります。

部門ごとであれば、離職率や顧客満足度のように、その部門として達成したい状態がKGIになります。

ここで大事なのは、「この数値がどうなれば良いのか」がはっきりしていることです。

また、KGIはここから更に細分化して考えることができます。

例えば営業利益であれば、

  • 売上
  • 売上原価
  • 販管費

といった形に分けられます。

さらに売上は、

  • 顧客数
  • 受注数
  • 平均単価

といった要素に分けることができます。

どこまで分けるかは厳密なルールがあるわけではなく「どの数字を動かせば結果が変わるのか」が見えるところまで分ければ十分です。

KSFって何?

KSFは、KGIを達成するために行う取り組みの中で、もっとも効果的と考えられるものです。

取り組みは複数考えられますが、その中でも「ここに手を打てば結果が変わるはずだ」と考えられるものを選びます。

例えば、

・成約率を上げたい
→ 商談の進め方を見直す
→ 営業スクリプトを整備する

・受注回数を増やしたい
→ 顧客との接点を増やす
→ 顧客データを整備する

といった形です。

ここでは「どこに手を打つのか」を決めることがポイントになります。

KPIって何?

KPIは、KSFが実行できているかを数値で確認するための指標です。

KSFは「やること」ですが、そのままだと実行できているかどうかが分かりません。

そこで、「どのくらいやれているか」を測れる形にします。

例えば、

・営業スクリプトを整備する(KSF)
→ スクリプト作成数、使用率(KPI)

・顧客データを整備する(KSF)
→ データ入力率、更新頻度(KPI)

このように、KSFとKPIはセットで考えます。

間接部門のKPI(KGI → KSF → KPI)

一見すると数値化しづらい管理部門の業務も、

KGI → KSF → KPI

の流れで整理すると、どこに指標を置けばよいのかが見えてきます。

ここからは、管理部門でもKPIを設定できることを、具体例で確認していきます。

人事

離職率の10%改善(KGI)
→ 月1回の1on1面談の実施(KSF)
→ 面談実施率(KPI)

従業員満足度の向上(KGI)
→ 四半期ごとの満足度調査の実施(KSF)
→ 調査実施回数(KPI)

採用目標〇人の達成(KGI)
→ 週次での求人媒体の更新・改善(KSF)
→ 更新実施回数(KPI)

総務

契約リスクの低減(KGI)
→ 契約締結前のNDA確認の徹底(KSF)
→ NDA確認実施率(KPI)

職場環境の改善(KGI)
→ 週1回の5Sチェックの実施(KSF)
→ 5Sチェック実施回数(KPI)

報告遅延の削減(KGI)
→ 出張後24時間以内の報告ルールの徹底(KSF)
→ 期限内提出率(KPI)

財務(経理)

貸倒損失の10%削減(KGI)
→ 取引開始前の与信チェックの実施(KSF)
→ 与信チェック実施率(KPI)

売掛金回収期間の短縮(KGI)
→ 入金予定日の事前確認とリマインド(KSF)
→ リマインド実施回数(KPI)

請求ミスの削減(KGI)
→ 毎朝の請求チェックのルーティン化(KSF)
→ チェック実施率(KPI)

このように整理すると、

・何を達成したいのか(KGI)
・どの行動に力を入れるのか(KSF)
・その行動が実行されているか(KPI)

が一つの流れとして見えるようになります。

このレベルまで具体化できると、
管理部門の業務でも、そのまま指標として落とし込むことができます。

よくある失敗

KPIを設定すること自体は重要ですが、設計や使い方を間違えると、かえって逆効果になることがあります。

代表的なパターンをいくつか挙げます。

部門ごとの最適化で全体が崩れる

部門ごとにKPIを設定すること自体は必要です。
ただ、それだけで判断すると、全体とのズレが出ることがあります。

例えば、

・経理がコスト削減を優先する
→ 必要な投資まで止まる
→ 売上機会が減る

・総務がルールを厳しくする
→ 現場の動きが遅くなる
→ 商談機会に影響が出る

どちらも部門単体では正しい判断ですが、会社全体ではマイナスになることがあります。

このズレを防ぐためには、会社全体のKGIから出発し、そこから部門ごとのKGIに落とし込み、さらにKSF、KPIへと分解していくことが重要です。

測れない指標を置いてしまう

理想を優先しすぎると、「測りづらい指標」をKPIにしてしまうことがあります。

例えば、

  • データを取るのに手間がかかる
  • 集計のたびに手作業が発生する
  • そもそも継続的に記録できない

こうした指標は、最初は良くても、すぐに運用が止まります。

完璧な指標である必要はありません。

多少ラフでも、継続して測定できることの方が重要です。

KGIとKPIが混ざっている

本来は「結果」と「行動」を分けて考える必要があります。

例えば、

  • 売掛金回転率
  • 離職率

こうした指標は結果であり、KGIとして扱うべきものです。

これをそのままKPIとして置いてしまうと、
「何をやれば改善するのか」が見えなくなります。

KSFが曖昧なままKPIだけ決めてしまう

KPIだけ先に決めてしまうと、現場は「なぜそれをやるのか」が分からない状態になります。

例えば、

  • 面談回数を増やす
  • チェック回数を増やす

といったKPIだけが設定されている場合、

それがどのKGIに繋がるのかが見えないと、形だけの運用になりやすくなります。

指標を増やしすぎる

「あれもこれも」とKPIを増やしすぎると、管理そのものが目的になってしまいます。

結果として、

  • 何を優先すべきか分からない
  • 現場の負担が増える

といった状態になります。

まずは絞って設定することが重要です。

運用のポイント

KPIは設計よりも、運用の方が難しいものです。
ここでは最低限押さえておきたいポイントを整理します。

完璧を目指さない

最初から精度の高い指標を作る必要はありません。

まずは回してみて、

  • 使いづらい
  • 実態とズレている

と感じたら見直していけば十分です。

必ず定期的に振り返る

KPIは設定するだけでは意味がありません。

・週次
・月次

など、確認するタイミングをあらかじめ決めておきます。

経営自走化との関係

管理部門も含めたKPI設定は、経営自走化、つまり経営者が現場にはりつかなくても売上利益が上がり、主体的な社員によって会社が回る状態をつくるための基礎になります。

管理部門の業務が数値で見えるようになることで、判断基準が個人依存から共通ルールへと切り替わります。

その結果、現場ごとの判断のばらつきが減り、経営者が細かく指示を出さなくても、一定水準の意思決定が現場で行われる状態がつくられます。

また、営業だけでなく管理部門も同じ方向のKGIに紐づくことで、部分最適ではなく全体最適で会社が動くようになります。

この考え方は、そのままKPI設計のポイントにもつながります。

まとめ

ここまで見てきたように、KPIは営業やマーケティングだけのものではなく、管理部門の業務にも設定することができます。

ポイントは、いきなりKPIを考えるのではなく、

・KGIで何を達成するのかを決める
・KSFでどこに手を打つのかを定める
・KPIでその実行状況を測る

という順番で整理することです。

この流れで考えることで、一見すると数値化しづらい業務でも、指標として落とし込むことができます。

また、設計だけでなく、

・会社全体のKGIから分解されているか
・継続して測定できる指標になっているか
・現場で実際に回せる内容になっているか

といった点もあわせて確認することが重要です。

KPIは作ることが目的ではなく、日々の判断と改善に使える状態にしておくことが大前提です。

この点を押さえておけば、管理部門でもKPIは十分に機能します。