黒字なのに、お金がない理由を説明できますか?

「キャッシュフロー管理はやらないとだめだよ」

これはほとんどの経営者が、

一度は聞いたことがあるはずです。

そして、キャッシュフローの改善方法も、
AIやネットで調べれば、いくらでも出てきます。

ただ、多くの場合、

「なるほど、そういう方法もあるのか」

で終わってしまい、実際の行動にはつながりません。

その理由の1つに、

  • なぜキャッシュフロー管理が重要なのか
  • なぜその施策をやると改善するのか

この“前提”が理解できていないという問題があります。

表面的な方法だけ知っても、
状況に応じた判断ができないため、
結局実行にうつせないのです。

そこで今回は、

キャッシュフロー管理と、
そのベースとなる貸借対照表について、
整理していきます。

そもそもキャッシュフローとは?

キャッシュフローとは、
「会社にお金が入ってきて、出ていく流れ」
のことです。

もう少し具体的に言うと、

今、会社の中にある

「現金といつでも引き出せる預金」

が増えているのか、減っているのか。

これを表しているものです。

例えば、

商品が売れても、入金が来月なら、
その時点では手元にお金はありません

仕入れの支払いや人件費が先に発生すれば、
その分だけ先にお金が減ります

このように「売上・利益」と
「実際のお金の動き」は
一致しないことがあります。

なぜキャッシュフロー管理が必要なのか?

当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、
会社の支払いは、利益ではなく、
手元資金で行われます。

どれだけ利益が出ていても、

  • 支払いのタイミングで資金が不足している
  • 入金が少し後になる

といった状況では、

必要な支払いを予定どおりに行うことができません。

このような事態を防ぎ、日々の支払いを確実に行うためには、
手元資金の状況を把握しておく必要があるのです。

これがキャッシュフロー管理の考え方です。

損益計算書だけの管理の危なさ

多くの会社は、損益計算書で、
売上や利益といった指標をチェックします。

もちろんこれは重要です。

ただ損益計算書では、
お金がいつ入ってきて、
いつ出ていくかは分かりません。

例えば、

  • 売上は計上されている
  • しかし入金は2ヶ月後

この場合、損益計算書上は問題なく見えても、
手元資金の状況としては、大問題になるかもしれません。

つまり、損益計算書のチェックだけでは、
手元資金の状況を把握することはできないのです。

黒字倒産とは何か?

黒字倒産とは、
利益が出ているにもかかわらず、
支払いに必要な資金を確保できない状態です。

典型的なケースとしては

  • 売上は伸びている
  • 利益も出ている
  • しかし入金が遅く、支払いが先に発生する

といった状況です。

この場合、

帳簿上の利益は出ているのですが、
手元資金が減っていきます。

結果として、支払いができない状態になる。

これが黒字倒産です。

ストーリーで理解する、貸借対照表の考え方

ここまででキャッシュフローの考え方を整理しましたが、
その動きを正しく捉えるために、

貸借対照表を見ていきます。

まず理解したいのは、お金は必ず

「どこから来たか(お金の出どころ)」と
「何に変わったか(お金の状態)」

のセットで動くという原則です。

これをシンプルなストーリーで見ていきましょう。

①最初に、自己資本1000で会社を設立しました。

【お金の出どころ】
自己資本1000
ーーーー
合計 1000

【お金の状態】
現金1000
ーーーー
合計 1000

②次に、銀行から500を借りました。

【お金の出どころ】
自己資本1000
銀行借入500
ーーーー
合計 1500

【お金の状態】
現金1500
ーーーー
合計 1500

③いよいよビジネスを始めるために、
700を使って設備を購入します。

【お金の出どころ】
自己資本1000
銀行借入500
ーーーー
合計 1500

【お金の状態】
現金800
固定資産700
ーーーー
合計 1500

お金の状態の合計は1500で②と同じですが、
内訳が変わったことが分かりますね。

④次に、原材料を500分購入します。

今回はそのうち300を現金で、
200は後日支払う条件で仕入れています。

このように、すぐに支払わない取引は、
貸借対照表では「買掛金」として扱われます。

【お金の出どころ】
自己資本1000
銀行借入500
買掛金200
ーーーー
合計 1700

【お金の状態】
現金500
原材料500
固定資産700
ーーーー
合計 1700

仕入先からお金を借りている、とイメージすると、
分かりやすいかもしれません。

⑤次に、原材料500のうち、
300を使って製品をつくります。

【お金の出どころ】
自己資本1000
銀行借入500
買掛金200
ーーーー
合計 1700

【お金の状態】
現金500
原材料200
製品300
固定資産700
ーーーー
合計 1700

お金の状態の合計は1700で④と同じですが、
内訳が変わったことが分かりますね。

⑥次に、製品200を500で販売します。

今回は200を現金でうけとり、残り300は後払いにしました。

このように、すぐに現金を受け取らない取引は、
貸借対照表では「売掛金」として扱われます。

【お金の出どころ】
自己資本1300(※)
銀行借入500
買掛金200
ーーーー
合計 2000

【お金の状態】
現金700
原材料200
製品100
売掛金300
固定資産700
ーーーー
合計 2000

※200で作った製品を、500で販売した、
差額(利益)の300が自己資本に追加されました。

ちなみに、債務超過とは何か

ここまでで、
「お金の出どころ」と「お金の状態」は、
常に同じ金額になるという原則が理解できたと思います。

そして、お金の出どころは、

  • 銀行借入や買掛金などの「負債」
  • 自己資本

に分かれます。

つまり、貸借対照表では、

お金の状態は、お金の出どころである負債と自己資本の
合計と等しくなります。

【お金の出どころ】
自己資本1300
銀行借入500
買掛金200
ーーーー
合計 2000

【お金の状態】
現金700
原材料200
製品100
売掛金300
固定資産700
ーーーー
合計 2000

さて、ここで、会社が赤字を出すと、
その分だけ自己資本が減っていきます。

この状態が続くと、
自己資本がゼロを下回る

ことがあります。

これが、債務超過です。

言い換えると、

お金の出どころのうち、負債の合計が、
お金の状態の合計よりも大きくなり、
差額である自己資本がマイナスになっている状態

です。

たとえば、

【お金の状態】
現金300
売掛金200
固定資産500
ーーーー
合計 1000

【お金の出どころ】
銀行借入700
買掛金500
自己資本▲200
ーーーー
合計 1000

このように、

  • お金の状態の合計は1000
  • お金の出どころを見ると、負債が1200
  • その差額として、自己資本が▲200

となっている状態です。

これが債務超過です。

債務超過は、自己資本がマイナスになっている状態なので、
会社の信用力が大きく低下します。

その結果、金融機関からの融資や、
取引条件に制約が生じやすくなります。

また、赤字が続くと資金調達が難しくなり、
事業継続に支障が出る可能性があります。

キャッシュフローを改善するには

改めて定義すると、キャッシュフローとは、
「現金および、いつでも引き出せる預金の増減」
のことです。

そして、現預金と利益は必ずしも一致しない、
という話もしました。

簡単に整理するとこういうパターンがあります。

現金  利益  会社の状況
多い  多い  素晴らしい
多い  少ない 借金で生きる。短期的な楽であり、長期的な苦しみ。
少ない 多い  キャッシュフローが不十分。架空な利益。
少ない 少ない ゾンビ状態。

このように現預金と利益は別々に見ないといけない、
というのが経営を安定して継続させるためのポイントです。

それでは貸借対照表の中で、
現預金がどのように動いているのかを
整理してみましょう。

まず、現預金は次のような形に変わります。

  • 原材料の在庫
  • 製品の在庫
  • 売掛金
  • 固定資産

一方で、現預金は次のような要因で増減します。

  • 銀行借入
  • 買掛金
  • 自己資本

このバランスを調整することが、
キャッシュフロー改善です。

分かりやすいものを3つだけ見てみましょう。

具体的な改善ポイント

①製品の在庫

製品の在庫は、まだ販売できていないので、

販売されるまでは、現預金が製品の形で止まっています。

在庫が増えるほど、

現預金が手元に戻るまでの時間が長くなります。

こうした状態を解消するためには、
在庫を販売して現預金に変えていく必要があります。

そのためには、まずどの製品が売れていないのかを把握し、
その製品をどう販売につなげるかを考えることが重要です。

そのための指標が、製品回転率です。

製品回転率は、在庫がどれくらいの期間で
販売されているかを示す指標です。

在庫金額を売上で割ることで、
「その在庫が何日分たまっているか」を把握できます。

数値が大きいほど販売が進んでいない状態で、
現預金が在庫のまま止まっていると判断できます。

製品回転率が大きい製品(売れていない製品)の把握ができたら、
下記のような対策で、現金化を進めていきましょう。

  • 値引きやセット販売で販売を進める
     → 製品を現預金に変えるスピードを上げる
  • 生産量を見直す
     → 売れる分だけ作ることで、在庫の増加を防ぐ

② 売掛金

売掛金は、売上にはなっているが、
まだ入金されていないので、

現預金は増えていない状態になります。

入金までの期間が長いほど、
その間は売掛金として残り続けます。

この状態を改善するためには、
入金までの時間を短くする必要があります。

そのためには、まず入金までの流れを整理し、

どこで遅れているのかを把握します。

ここで使える指標が、売掛金回転期間です。

売掛金 ÷ 売上 × 365日 で計算し、
入金までに何日かかっているかを把握します。

この日数が長いほど、
現預金が売掛金のまま残っている期間が長い状態です。

売掛金の状態が把握できたら、

下記のような対策で現金化を進めましょう。

  • 請求のタイミングを見直す
     → 請求が遅れていないかを確認する
  • 請求を早める
     → 入金までの期間を短くする
  • 入金状況の確認と対応を行う
     → 入金遅れを防ぐ

③ 買掛金

買掛金は、原材料や製品を仕入れたが、

まだ支払いを行っていない状態を指します。

支払いを後日にすることで、
現預金の支出を遅らせています。

買掛金が増えるほど、
現預金を手元に残すことができます。

この考え方を使うためには、
支払いのタイミングをどう設計するかが重要です。

まずは、どのタイミングで現預金が減っているのかを把握します。

その具体的な進め方の一例として、下記のような対応が考えられます。

  • 支払日と金額を一覧で把握する
     → どのタイミングで現預金が減っているかを確認する
  • 支払日をまとめる
     → 支払いタイミングをコントロールしやすくする
  • 発注のタイミングを調整する
     → 支払時期をコントロールする

まとめ

ここまでを読んで、

「これは製造業の話でしょ?」
「うちはサービス業だから在庫もないし、心配しなくてよい」

と思った方もいるかもしれませんが、
ぜひ一度、現預金の推移を確認してみてください。

過去6か月、可能であれば12か月の現預金の動きを見て、
減っているのであれば、その原因がどこにあるのかを
貸借対照表で確認しましょう。

  • 売掛金が増えていないか
  • 前払いの費用が増えていないか
  • 固定資産への投資が増えていないか

このように、現預金の減少につながっている項目を

一つずつ見ていきます。

ここまで確認できたら、

影響が大きい項目を1つだけ選びましょう。

そして改善の打ち手を調べ、もっとも

ハードルが低い打ち手を、

1つ実行しましょう。