経営戦略を考えるとき、
「どう差別化するか」で悩むことはありませんか。
経営戦略というと、「競合にどう勝つか」「どう差別化するか」を考えることが多いと思います。
特に「差別化」という言葉を聞くと、
- 世界初の商品
- 圧倒的な技術
- 誰にも真似できない独自性
のような、“オンリーワン”をイメージする方も少なくありません。
もちろん、そうした強い差別化ができれば理想です。
ただ実際には、どんな会社であっても、
- 人手
- 時間
- 予算
には限りがあります。
そのため、常に圧倒的な独自性を作り続けるのは、簡単なことではありません。
また、競争が激しくなればなるほど、
- 価格競争になる
- 広告費が上がる
- 利益率が下がる
- 疲弊する
という状態にもなりやすくなります。
そこで重要になるのが「真正面から競争しない」という考え方です。
ブルーオーシャンとは何か
ブルーオーシャン戦略は、INSEAD教授のW・チャン・キム氏と、レネ・モボルニュ氏によって提唱された経営戦略です。
簡単にいうと「競争が激しい既存市場(レッドオーシャン)で戦うのではなく、競争の少ない新しい市場をつくる」という考え方です。
ブルーオーシャンというと、「世界初の革新的商品」「誰も思いつかなかった新サービス」のようなものをイメージする方も多いと思います。
もちろん、そうした事例もあります。
ただ実際には、そこまで大げさな話だけではありません。
例えば、
- 売り方を変える
- 顧客を変える
- 価値の見せ方を変える
- 比較されるポイントを変える
だけでも、競争はかなり緩くなることがあります。
つまり、中小企業にとってのブルーオーシャンは、「誰もいない市場をゼロから発明する」というより、「競争が少ない場所を見つける」という感覚に近いかもしれません。
また、ブルーオーシャンは「一度見つけたら永遠に安泰」というものでもありません。
競争が少ない場所を見つけ、そこで一定の優位性を作る。
そして、また競争が激しくなってきたら、次の戦い方を考える。
その繰り返しとも言えます。
重要なのは「業界の当たり前」を疑うこと
ブルーオーシャンを考える時に重要なのは、「業界では普通」「昔からそうしている」を一度疑ってみることです。
例えば、赤城フーズ株式会社の「熱中症対策カリカリ梅」は、非常に分かりやすい例だと思います。
この商品が開発された当時、食品業界では「減塩」が大きな流れでした。
塩分を減らすことが、“健康的で良いこと”とされていた時代です。
しかし同社は、その当たり前を疑いました。
そして「むしろ塩分補給が必要な場面があるのではないか」という視点から、熱中症対策向けのカリカリ梅を開発しました。
当時は、まだ「熱中症対策」という言葉自体が、今ほど一般化していませんでした。
つまり「梅干し市場もしくはカリカリ梅市場でどう勝つか」ではなく、「新しい需要を作れないか」を考えた形です。
これは、巨大な技術革新ではありません。
しかし「減塩が正しい」という食品業界の当たり前を疑ったことで、新しい市場を切り開いた事例と言えます。
対象顧客を変える
多くの会社は、「今のお客様」を前提に商品やサービスを考えます。
もちろんそれ自体は重要です。
ただ実際には、
- まだ買っていない人
- 以前買っていたが離れた人
- そもそも業界に興味がない人
を見ることで、新しい市場が見えることがあります。
例えば日本酒でも「日本酒好きの男性」だけをターゲットにすると、競争が激しくなります。
一方で「父の日に何を贈ろうか悩んでいる娘さん」をターゲットにすると、見え方が変わります。
そうなると、
- 飲みやすい味
- 高級感のあるラベル
- ギフト包装
- メッセージカード
- 珍味セット
など、求められる価値も変わってきます。
つまり「飲む人」だけではなく「選ぶ人」に視点を広げることで、新しい市場が見えることがあります。
また、
- 買う人
- 使う人
- 影響する人
が違うケースは、実はかなり多くあります。
この視点で整理してみると「本当に狙うべき相手は誰なのか」が変わることもあります。
商品の価値を変える
競争が激しい業界では、「高品質」「高機能」だけでは、差別化が難しくなることがあります。
なぜなら、競合も同じ方向で改善してくるからです。
そこで重要になるのが、
「何を価値として感じてもらうか」
を変えることです。
例えば日本酒でも「お酒」として売るだけでは、価格競争になりやすくなります。
しかし、
- 酒蔵ツアー
- 仕込み体験
- ペアリング体験
- 地域観光
- 杜氏との交流
などを組み合わせると「お酒を買う」ではなく、「体験を楽しむ」という価値に変わります。
すると、単純な価格比較ではなく、「その時間を楽しみたい」「この場所に行ってみたい」という別の価値で選ばれるようになります。
また、
- 商品を教育サービス化する
- ストーリーを伝える
- 生産背景を見せる
だけでも、価値の感じ方は変わります。
つまり、商品の中身だけではなく「どんな価値として届けるか」を変えることでも、競争軸をずらすことができます。
商品の使い方を変える
商品そのものではなく、「使われ方」を変えることで、新しい価値が生まれることがあります。
例えば日本酒というと「食事と一緒に飲むもの」というイメージが強いと思います。
しかし、使い方を変えることで、競争相手そのものが変わることがあります。
例えば、
- バニラアイスに少しかける
- チョコレートと合わせる
- 日本酒カクテルにする
- 炭酸で割る
- デザートと組み合わせる
といった形です。
また、海外では日本酒を、“Sake”としてワインのように楽しむ文化も広がっています。
つまり「居酒屋で飲む日本酒」という前提から離れることで、新しい市場が見えてくることがあります。
さらに、
- 使用前
- 使用中
- 使用後
まで含めて考えると、追加商品や新サービスが見つかることもあります。
例えば、
- 日本酒に合うおつまみ
- 酒器
- 保存方法
- 飲み方ガイド
などです。
こうして見ると「商品そのもの」だけではなく、「どんな場面で、どう使われるか」
を変えることでも、競争軸をずらせることがあります。
支払い方法を変える
商品そのものは変えなくても、「どう買ってもらうか」を変えることで、市場が変わることがあります。
例えば日本酒でも「1本ずつ売る」だけではなく、
- 毎月届く定期便
- 季節限定酒のサブスク
- 飲み比べセット
- 酒蔵会員制度
などに変えることで、売り方そのものを変えることができます。
また、今では当たり前ですが、
- ネット通販
- クレジットカード決済
が広がり始めた頃は、それ自体が差別化になる時代もありました。
特に地方の酒蔵にとっては「現地でしか買えない」状態から、「全国から買える」状態に変わったインパクトは非常に大きかったと思います。
つまり、商品の中身だけではなく「買いやすさ」を変えるだけでも、競争をずらせることがあります。
また、
- まとめ買い
- ギフト化
- 会員制
- 限定販売
など、支払い方法や販売方法を変えることで、顧客との関係性自体が変わることもあります。
「辞める」「減らす」も重要
ブルーオーシャンというと「新しいことを増やす」イメージを持つ方も多いと思います。
もちろんそれも重要です。
ただ実際には、
- 辞める
- 減らす
ことで、逆に価値が上がることもあります。
以前、ある道の駅で日本酒を見ていた時のことです。
本来なら、高級そうな箱に入っていそうな日本酒が、新聞紙に包まれて売られていました。
普通に考えれば「簡素すぎる」と思われるかもしれません。
しかし逆に、
- 地元感
- 手作り感
- 産直感
が強く伝わり「なんだか美味しそうだな」と感じて、思わず買ってしまいました。
つまり、必ずしも“豪華にする”ことだけが価値ではありません。
むしろ、余計なものを減らすことで、魅力が伝わることもあります。
また、業界では当たり前になっているものでも、
- 本当に必要なのか
- 顧客は本当に求めているのか
を見直してみると、意外と不要なものが見つかることがあります。
特に中小企業では、限られたリソースをどう使うかが重要です。
全部をやろうとするのではなく「何に集中するか」を決めることも、立派な戦略です。
代替商品を見る
競争相手というと、同業他社をイメージすることが多いと思います。
しかし実際には、競争相手は、同じ業界の会社だけとは限りません。
例えば日本酒であれば、競合は他の日本酒メーカーだけではありません。
- ビール
- ワイン
- ハイボール
- 焼酎
なども、見方によっては競合になります。
なぜなら、お客様が求めているのは「日本酒を飲むこと」そのものではなく、
- 食事を楽しみたい
- リラックスしたい
- 気分転換したい
なのかもしれないからです。
つまり「何を売っているか」ではなく、「お客様は何を求めているのか」まで広げて考えることで、競争の見え方が変わります。
また、代替商品を見ることで「なぜそちらが選ばれているのか」も見えやすくなります。
例えば、
- 飲みやすさ
- 手軽さ
- 価格
- イメージ
- 料理との相性
などです。
こうして考えると、競争相手は、同業他社だけではないことが分かります。
そして、そこに気づくことで、新しい戦い方が見えてくることがあります。
経営自走化との関係
ブルーオーシャンは、単なるマーケティング論ではありません。
実際には、経営自走化ともかなり関係があります。
経営自走化とは、
「社長が現場にはりつかなくても、売上・利益が上がり、主体的な社員によって会社が回る状態」のことです。
しかし実際には、価格競争に巻き込まれるほど、
- 社長判断が増える
- 値引き判断が増える
- 現場負荷が増える
- 利益率が下がる
- 短期売上に追われる
状態になりやすくなります。
すると、現場も疲弊しやすくなり、「社長が細かく判断し続けないと回らない」状態になっていきます。
一方で、
- 自社らしい価値
- 比較されにくい価値
- 独自の顧客接点
が作れてくると、過度な価格競争から抜けやすくなります。
また「何をやるか」だけではなく、「何をやめるか」を決めることも、経営自走化では非常に重要です。
リソースが限られている中で、全部をやろうとすると、現場は複雑化し、属人化しやすくなります。
だから、
「どこで戦うのか」
「何を強みにするのか」
を整理することが、結果として、会社が回りやすい状態にもつながっていきます。
まとめ
ブルーオーシャンというと「特別な会社だけができる戦略」のように感じるかもしれません。
しかし実際には、
- 顧客を変える
- 価値を変える
- 使い方を変える
- 支払い方法を変える
- 不要なものを減らす
といった、日常的な経営判断の積み重ねでもあります。
重要なのは「競争相手にどう勝つか」だけではなく、「競争軸そのものを変えられないか」を考えることです。
またブルーオーシャンを考える視点は、今回取り上げたもの以外にもたくさんあります。
例えば・・・
- サブスク化できないか?
- 購入後サポートを付けられないか?
- もっと簡単にできないか?
- もっと高級化できないか?
- もっと手軽にできないか?
- 購入後の不安を減らせないか?
- 他業界と組み合わせられないか?
- 「面倒」を減らせないか?
- 初心者向けにするとどうなるか?
- 法人向けにするとどうなるか?
- 地域限定にするとどうなるか?
- 逆に全国展開するとどうなるか?
- 商品のサイズを変えるとどうなるか?
- 販売数量を変えるとどうなるか?
- 短時間利用向けにできないか?
- 高頻度利用向けにできないか?
- 「選びにくい」を減らせないか?
- 購入前の不安を減らせないか?
- 利用シーンを限定するとどうなるか?
- 逆に利用シーンを広げるとどうなるか?
こうした問いを、一度チームでブレストしてみるだけでも、「これ、業界の当たり前だと思っていたな」という気づきが出てくることがあります。
ブルーオーシャンというと、大きな戦略や革新をイメージしがちですが、実際には、こうした小さな視点のズレから始まることも少なくありません。
ぜひ一度、時間をとって、「うちの業界では当たり前になっているけれど、本当に必要なのか?」を考えてみてください。
そこに、次の戦略のヒントが隠れていることがあります。
