給与や賞与はどう決める?報酬制度を考えるときの基本

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ここ数回の記事では、人事評価制度についてお伝えしてきました。

人事評価制度は、会社が社員に求める役割や行動、成果を明確にし、仕事への貢献や成長を評価するためのものです。

従業員数が10~20人程度になり、経営者一人では社員それぞれの仕事や成長を把握しきれなくなる頃が、導入を考える一つの目安になります。

人事評価制度をつくり、運用していくと、次に決める必要があるのが、評価結果を給与や賞与にどう反映するかです。そこで必要になるのが、報酬制度です。

報酬制度とは、一言でいうと「給与や賞与の決め方を定める仕組み」です。

人事評価制度で社員の貢献や成長を評価し、報酬制度でその結果を給与や賞与に反映します。社員が仕事で貢献し、能力を高めた結果が給与や賞与にも反映されることは、人材の成長や定着につながります。

今回は、報酬制度の細かな設計方法ではなく、報酬制度を考える際に押さえておきたいポイントをお伝えします。

なお、報酬制度は、会社の考え方や大切にしていることが色濃く表れる領域です。

この記事では、会社が長期的に安定して利益を出し続け、経営自走化を実現することを前提に考えます。

会社の方針によっては違和感を持つ内容もあるかもしれませんが、その前提に立った考え方としてお読みください。

給与の決め方に、明確な根拠はありますか?

給与の決め方が明確になっていないと、社員は、なぜ自分がその給与になっているのかを理解できません。

また、仕事への貢献や能力と給与の関係が薄れ、社員間の不公平感や会社への不信感につながることもあります。

報酬制度が明確になっていない会社では、給与の決め方によって、次のような課題が起こりがちです。

社長の感覚で給与が決まり、不公平感が生まれる

客観的な基準がなく、社長の感覚で給与を決めていると、仕事への貢献や能力よりも、交渉の上手さが給与に影響することがあります。

社員から見ても、なぜその給与になったのかが分かりません。不公平感が生まれ、仕事への意欲や会社への信頼が下がり、離職につながるおそれがあります。

創業者であれば、自分の判断で押し切れるケースもあります。しかし、事業承継をして経営者が代わった途端、それまで表面化していなかった不満が噴き出すこともあるため、注意が必要です。

前職の給与を引き継ぐことで、社内の給与バランスが崩れる

採用時に前職の給与を基準にすると、その社員の能力や、社内のほかの社員とのバランスが十分に反映されないことがあります。

給与については、経営者が「ほかの社員には言わないように」と伝えても、社員間で伝わるものと考えておいた方がよいでしょう。

新しく入った社員の給与が既存社員より高くなれば、不公平感が生まれ、社内の人間関係が悪くなることもあります。

前年の給与への上乗せが続き、貢献や能力とのずれが広がる

毎年「前年より何円上げる」「何%上げる」と決めるだけでは、その年の貢献や能力の向上が、給与に正しく反映されるとは限りません。

また、昇給だけがあり、給与が下がることがなければ、最初に高い給与を設定された人は、その後も高いままになります。

その結果、仕事への貢献や能力と給与の関係が薄れ、年功序列の報酬体系になってしまいます。積極的で能力のある社員が、正当に評価されていないと感じて離職する原因にもなります。

さらに、売上や生産性の伸びを伴わずに昇給を続けると、売上に対する人件費の割合が高くなり、経営を圧迫しかねません。

給与を上げ続ければ、社員は意欲的に働くのか?

給与は、社員が働くうえで大切な要素です。しかし、給与を上げることだけで、社員の意欲を維持しようとするのは難しいものです。

昇給直後は意欲が高まっても、時間がたてば、その給与が当たり前になります。高い固定給が、そのまま高い意欲につながり続けるとは限りません。

昇給だけを意欲の源にしてしまうと「昇給してくれないなら、頑張らなくてもいい」という考え方になり、会社が昇給を続けられなくなったときに、退職につながることもあります。

一方、成果に応じて報酬を支払う方法にも、注意点があります。

今すぐ報酬につながる仕事ばかりを優先し、将来への投資となる仕事に取り組まなくなることがあるからです。

お金を理由に働く人は、お金を理由に退職することもあります。そのため、給与や賞与を考えるときには、お金以外の面でも意欲を持って働ける環境を整える必要があります。

例えば、次のような要素です。

  • 会社の経営方針を理解し、共感できる
  • 自分に合った仕事に取り組める
  • 目標を持ち、達成できる
  • 学び、挑戦し、成長できる
  • 社内の表彰制度で認められる
  • 社会や顧客への貢献が、社外でも表彰される

「人はお金で来たとしても、環境のために残る」という考え方があります。採用時の給与だけでなく、入社後にどのような環境で働けるかも、社員の定着に関わります。

会社の成長と、社員の収入をつなげる

報酬制度を考えるうえでは、経営者と社員の双方にとって、納得できる仕組みにする必要があります。

経営者と社員では、給与に対する見方が異なります。

経営者にとって、給与は人件費です。人件費を投資することで、会社の成長につなげたいと考えます。

一方、社員にとって、給与は生活を維持するために必要な資源です。会社に対して、収入や労働環境の改善を求めます。

この二つの視点を合わせるために、会社への貢献と個人の成長を、給与や賞与につなげて考えます。

会社への貢献は、目標の達成状況などを定量的に評価します。

個人の成長は、会社が求める社員像に、どれだけ近づいたかを定性的に評価します。

会社が求める社員像に近づくほど会社が成長し、その社員の収入も高くなる。経営者が求める会社の成長と、社員が求める収入の向上を、このようにつなげます。

評価制度と報酬制度は、分けて設計する

人事評価の結果を給与や賞与に反映するため、人事評価制度と報酬制度は連携させます。ただし、一つの制度として考えるのではなく、それぞれを分けて設計する必要があります。

例えば、先に昇給額を決め、その金額に合うように評価を調整してしまうと、貢献や成長を評価するという順序が逆になります。

まず評価基準に沿って評価し、その結果を報酬制度に基づいて給与や賞与に反映します。

また、評価制度と報酬制度を分けておけば、給与相場が変わったときにも、評価基準とは別に賃金テーブルを更新できます。

制度づくりに関わる人も分けて考えます。

評価制度は、マネージャーにも構築に参画してもらいます。自分たちが使う評価制度を理解し、納得したうえで運用できるようにするためです。

一方、報酬制度は役員が構築します。会社全体の人件費や、利益への影響を踏まえて決める必要があるためです。

相場と生産性を踏まえて、給与や賞与を決める

給与や賞与の額を決める際には、社内の評価だけでなく、業界の給与相場や会社の生産性も踏まえて考えます。

まず、業界の相場を調べることが必要です。

当社の考え方では、毎月の給与は相場と同じ水準を基本とし、賞与は相場より高くすることで、給与と賞与を合わせた年間収入を高めることを目指します。

そのうえで、社員ごとの貢献や能力に応じて、給与や賞与の額に差をつけます。標準的な社員の年間収入は相場より低く、優秀な社員の年間収入は相場より高くするという考え方です。

また、収入は生産性に伴うものです。生産性が頭打ちになっているのに、給与や賞与だけが増え続ける状況は避ける必要があります。

評価制度と報酬制度は、毎年見直す

評価制度も報酬制度も、一度つくれば完成するものではありません。

会社を取り巻く環境や戦略が変われば、社員に求める役割や、給与・賞与の考え方も変わります。そのため、会社の戦略に合わせて、毎年調整していく必要があります。

会社が社員に求めることと、評価すること、給与や賞与に反映することが合っているかを、継続して確認していきましょう。

経営自走化との関係

経営自走化を進めるには、社員が当事者意識を持ち、任された役割に取り組めるようになることが必要です。

そのためには、会社が社員に何を求め、その取り組みをどのように評価し、処遇へ反映するのかを明確にする必要があります。

人事評価制度で、会社が求める行動や成果、身につけてほしい能力を明確にする。そして、報酬制度で、その貢献や成長を給与や賞与に反映します。

社員は評価項目を見て、何を学び、どのように行動し、どのような成果を目指せばよいのかを理解できます。さらに、その取り組みが給与や賞与にも反映されるようにします。

また、会社の価値観に沿った行動を評価することは社風づくりにつながります。年功序列ではなく、積極的で能力のある社員が昇進できるようにすることも大切です。

こうした評価と処遇を通じて、社員の当事者意識やリーダーシップを育て、仕事を任せられる範囲を広げていきます。

給与査定のためだけでなく、社員が成長し、仕事や権限を任せていくための制度として、人事評価制度と報酬制度を考えてみてください。

まとめ

今回は、報酬制度を考える際に押さえておきたいポイントをお伝えしました。

  • 社長の感覚や前年の給与だけで決めず、貢献や能力を反映する
  • 報酬だけに頼らず、共感や挑戦、成長など、意欲を持って働ける環境を整える
  • 会社への貢献と個人の成長を、給与や賞与につなげる
  • 評価制度と報酬制度は分けて設計し、連携させる
  • 業界の相場と生産性を踏まえ、会社の戦略に合わせて毎年調整する

まずは、自社の給与や賞与が何を基準に決まっているのか、人事評価の結果とどうつながっているのかを確認してみてください。

次回は、報酬制度の種類とそれぞれの特徴、設計の進め方についてお伝えします。