「すべてのお客様を平等に大切にする」は、本当に正しいのか?

最近、「カスタマーハラスメント対策」という言葉を目にする機会が増えました。

コンビニや病院、鉄道会社などで、

「暴言・迷惑行為はお断りします」

といった掲示を見たことがある方も多いのではないでしょうか。

東京都でも、カスタマーハラスメント対策に取り組む企業への奨励制度が始まるなど、国や自治体もこのテーマに注目しています。

少し前までは、

「お客様は神様です」
「すべてのお客様を平等に大切にするべき」

という考え方が、当たり前のように語られていました。

もちろん、お客様を大切にすること自体は重要です。

ただ実際には、すべてのお客様に同じように時間と労力をかけることが、会社にとってプラスになるとは限りません。

特に最近は、人手不足が深刻になっています。

以前であれば、人海戦術で吸収できていた問題も、今はそうはいきません。

一部のお客様対応に時間を取られることで、

  • 従業員のモチベーションが下がる
  • 心理的安全性が損なわれる
  • 本来向き合うべき良いお客様への対応時間が減る
  • 利益率が下がる
  • 社長しか対応できない状態になる

といった問題が起きることもあります。

つまりこれは、単なる接客の話ではなく、

「誰に時間を使うのか」
「どのお客様と長く関係を築くのか」

という、経営戦略の話でもあるのです。

では、

  • 良いお客様と悪いお客様をどう見分けるのか
  • 良いお客様を増やすにはどうすれば良いのか
  • 悪いお客様にはどう対応すれば良いのか

今日は、このテーマについて整理していきます。

良いお客様・悪いお客様を整理する

まず行うのは、今のお客様の分析です。

ただし、これはBtoBとBtoCで少しやり方が異なります。

取引先が少ないBtoB企業の場合

まずは、既存顧客の一覧を出してみましょう。

そして、

  • 売上が高いか
  • 利益率が高いか
  • 提案が通りやすいか
  • こちらの話を理解してくれるか
  • 商品やサービスに満足しているか
  • 継続取引につながっているか
  • 紹介してくれるか

などの観点で整理してみます。

逆に、

  • 値下げ要求が強い
  • クレームが多い
  • 社内の調整負荷が高い
  • 利益率が低い
  • 何度提案しても価格しか見ていない

というお客様もいるかもしれません。

ここで重要なのは「売上が高い=良いお客様」とは限らない、ということです。

売上が大きくても、現場が疲弊していたり、利益が残っていなかったり、社長が付きっきりになっているなら、経営全体で見るとマイナスになっていることもあります。

取引先が多いBtoC企業の場合

BtoCの場合は、1社ずつ分析するのが難しいケースもあります。

その場合は、

  • リピート率
  • 客単価
  • クレーム率
  • レビュー内容
  • スタッフの負担感
  • 紹介や口コミの有無

などをベースに傾向を見ていきます。

例えば、

  • リピート率が高いお客様
  • スタッフとの関係性が良いお客様
  • 追加提案を受け入れてくれるお客様

には、共通点があることが多いです。

逆に、

  • 値引き要求が強い
  • ルール変更を求める
  • スタッフが対応を嫌がる

といった傾向が集中しているケースもあります。

更にシンプルに整理したいなら、

  • 利益が多いか少ないか
  • 利益拡大の可能性が高いか低いか
  • 対応していて楽しいか楽しくないか

この3軸でプロットしてみるだけでも、かなり傾向が見えてきます。

良いお客様の特徴を整理する

既存顧客の分析をして、良いお客様の傾向が見えてきたら、次はペルソナを整理します。

ここでいうペルソナとは「どんな人が、自社の商品やサービスを喜んでくれるのか」を具体化する作業です。

整理する切り口としては、

  • 年齢
  • 性別
  • 所得
  • 役職
  • 業種
  • 従業員数
  • 会社規模
  • 意思決定スピード
  • 価値観
  • 考え方
  • 話し方
  • 何を重視しているか

などがあります。

また、

  • 購入する人
  • 実際に使う人
  • 意思決定に影響を与える人

が異なるケースもあります。

例えばBtoBなら、社長が契約するけれど、実際に使うのは現場社員、そして顧問税理士が影響を与えている、ということもあります。

ちなみに、ペルソナというと「1商品につき1人」をイメージする方も多いですが、実際にはそうとも限りません。

この段階で無理に1つへ絞ると、かえって機会損失になることがあります。

また、無理に共通化すると、誰にも刺さらないメッセージになることもあります。

1つの商品に複数のペルソナが存在することは、決して不自然なことではありません。

良いお客様は「何」に価値を感じているのか?

次に行うのは、顧客ニーズの整理です。

ここで重要なのは「お客様は何を買っているのか」を、表面的ではなく考えることです。

例えば、美容室なら、単に髪を切っているわけではありません。

  • きれいになりたい
  • 若々しく見られたい
  • 気分転換したい
  • 安心して相談したい

こういった感情的な価値も含まれています。

BtoBでも同じです。

例えば経理代行サービスなら、単に記帳を外注したいだけではなく、

  • 数字への不安を減らしたい
  • 本業に集中したい
  • 資金繰りを安定させたい
  • 安心して相談したい

というニーズが含まれていることがあります。

また、ここで「価格以外」と書いているのには理由があります。

最初から価格を中心に考えてしまうと、思考停止が起きやすいからです。

もちろん、同じ価値なら安い方が良い。これは自然なことです。

ただ実際には、価値が違えば、高くても選ばれることがあります。

例えばBtoCなら「この美容師さんは指名料がかかるけれど、仕上がりが安心だからお願いしたい」ということがあります。

BtoBでも「この会社は少し高いけれど、相談への対応が早く、話も通じやすいからお願いしたい」というケースがあります。

つまり、お客様は価格だけで判断しているわけではないのです。

どのお客様を重点的に狙うのか?

ペルソナを整理したら、次は「どのお客様を重点的に狙うのか」を考えます。

ここでは、

  • 自社の強みと合っているか
  • 価格以外の価値を理解してくれるか
  • 利益率はどうか
  • 成長市場か
  • 新しい市場開拓につながるか
  • 競争優位性を作れるか
  • リスクが高すぎないか

といった観点で整理していきます。

例えば、

「売上規模は大きいけれど、価格競争が激しい市場」

もあれば、

「市場規模は小さいけれど、利益率が高く、紹介が起きやすい市場」

もあります。

重要なのは、なんとなく全員を狙うのではなく、

「自社にとって、どのお客様が最も良い関係を築けるのか」

を考えることです。

良いお客様に合わせて商品・サービスを改善する

ターゲット顧客が見えてきたら、次は商品やサービスを改善していきます。

ここで大切なのは「自分たちが良いと思う商品」ではなく、「良いお客様が価値を感じる商品」へ近づけていくことです。

例えば、

  • どんな説明をすると安心感が増すのか
  • どんな営業担当者が好まれるのか
  • 何を強化すると喜ばれるのか
  • 逆に、削っても問題ない要素は何か
  • 追加すると価値が高まるものは何か

を整理していきます。

また、商品やサービスには、

  • 早い
  • 品質が高い
  • 安い

という3要素がありますが、全部を完璧に満たすのは難しいこともあります。

だからこそ「誰に、どの価値を届けるのか」を明確にする必要があります。

悪いお客様をどうするのか?

ここはBtoBとBtoCで、少し考え方が変わります。

BtoBの場合

BtoBで有効なのは、値上げです。

例えば、対応負荷が高く、利益が低いお客様に対して、10%程度の値上げを行う。

それで離れるなら、もともと価格しか見ていなかった可能性があります。

逆に、それでも残るなら、利益率が改善され、「良いお客様」に変わるケースもあります。

BtoCの場合

BtoCで重要なのは「こういう行為には毅然と対応する」という姿勢を明確にすることです。

実際、最近は店舗や病院などでも、

  • 暴言
  • 迷惑行為
  • 過剰要求

に対する掲示が増えています。

また、ルールを明文化するのも有効です。

例えば、

  • キャンセルルール
  • 予約ルール
  • 対応範囲
  • サポート時間

を明確にすることで、トラブル自体を減らしやすくなります。

経営自走化との関係

このテーマは、経営自走化とも深く関係しています。

なぜなら、悪いお客様への過剰対応は、会社を「社長依存」にしやすいからです。

例えば、

  • 現場で判断できず、全部社長判断になる
  • クレーム対応だけ社長が呼ばれる
  • 従業員が萎縮する
  • チャレンジより“怒られないこと”が優先される

こういった状態になると、主体的に動く組織が育ちにくくなります。

また、一部のお客様対応に時間を取られることで、本来向き合うべき、良いお客様への改善や提案の時間も減っていきます。

つまり「誰に時間を使うのか」は、組織づくりにも大きく影響するのです。

まとめ

「すべてのお客様を平等に大切にする」という考え方自体は、とても綺麗な考え方です。

ただ実際には、会社の時間・人・体力には限界があるので、

  • どのお客様と長く関係を築くのか
  • どのお客様に価値提供を集中するのか
  • どのお客様とは距離を取るのか

を考えることが、経営戦略として重要になります。

そしてその積み重ねが、

  • 利益率
  • 従業員満足
  • 心理的安全性
  • 組織の主体性

にもつながっていきます。

ぜひ一度「自社にとって良いお客様とは誰か」を整理してみてください。