「売上を伸ばしたい」「新しい事業を立ち上げたい」
経営者の方と計画づくりをしていると、そんな話になることがよくあります。
しかし「何をやるのか」は決まっても「それを誰がやるのか」までは整理できていないケースも少なくありません。
当たり前に聞こえるかもしれませんが、経営計画を実現するためには、人の計画も必要です。
例えば、
- 営業担当を増やす
- 新しい事業責任者を育成する
- マーケティング機能を強化する
といった話になれば、当然それを担う人材が必要になります。
そこで重要になるのが、人事戦略です。今回は、人事戦略の考え方についてお話ししたいと思います。
未来の組織図とは?
未来の組織図とは、長期経営計画を実現したときの組織の姿を描いたものです。
例えば、現在は営業担当しかいない会社があるとします。しかし、5年間の長期経営計画を考えた結果「営業だけでは売上が頭打ちになる」という結論になったとしましょう。
そこで、
- ホームページの改善
- 広告運用
- SNS発信
- 見込み客の育成
などを行うマーケティング機能を強化する方針を決めました。
そうなると、将来的にはマーケティング担当者が必要になります。
つまり、
経営戦略が決まる
↓
必要な役割が決まる
↓
必要な人材が決まる
という流れで、これを可視化したものが未来の組織図です。
未来の組織図の作り方
まずは現在の組織図を整理します。会社によっては、正式な組織図が存在しないこともあります。その場合は、現在の組織図を整理するところから始めましょう。
そのうえで、長期経営計画を実現した状態を想定し、3年後あるいは5年後の組織図を作成します。
ポイントは「今の延長線上」ではなく「戦略を実現するために必要な組織」を考えることです。
例えば、マーケティングを強化するのであればマーケティング担当が必要になるかもしれません。
社長が現場を離れて経営に専念したいのであれば、部門責任者が必要になるかもしれません。
このように、経営戦略から必要な役割を考え、それを組織図に落とし込んでいきます。
未来の組織図は、長期経営計画を実現するための人材計画の土台になるものです。
次に考えるのは「社員像」
未来の組織図ができたら、次はそのポジションにどんな人が必要なのかを考えます。
例えば、営業部長であれば「会社の方針を理解できる」「部門を運営できる」といった能力が必要かもしれません。
チームリーダーであれば「コスト構造を理解する」「改善活動を進める」といった能力が求められるかもしれません。
また、能力だけではなく、どのような考え方や価値観を持っていてほしいのかも重要です。
例えば「チャレンジ精神」「傾聴力」「ポジティブな考え方」などです。
このように、役割ごとに必要な能力や考え方を整理したものが社員像です。
適材適所を実現するDISC
とはいえ「どんな人がどんな仕事に向いているのか」を判断するのは簡単ではありません。
そこで参考になるのがDISC診断です。
DISC診断とは、人それぞれが持つ行動特性やコミュニケーションの傾向を把握するためのツールで、人の特性を整理し、強みや得意な役割を理解する際の参考になります。
DISCでは、人の行動特性を4つのタイプで整理します。
D(Dominance):主導性・チャレンジ志向
I(Influence):社交性・発信力
S(Steadiness):協調性・忍耐力
C(Conscientiousness):分析力・正確性
例えば、新規開拓営業であれば、知らない人にも積極的にアプローチできる社交性が求められるため、Iタイプの特性が活かされやすいでしょう。
一方で、品質管理やマニュアル作成では、正確性や論理性が重要になるため、Cタイプの特性が活かされやすいでしょう。
また、既存顧客対応では、相手の話を丁寧に聞く姿勢や気遣いが求められるため、Sタイプの特性が活かされやすいかもしれません。
もちろん、人を4つのタイプに単純分類できるわけではありません。しかし「どの役割にどのような特性が必要なのか」を考える材料としては非常に有効です。
また、DISC診断は社員だけでなく、経営者自身が受けることにも意味があります。
自分の考え方の特徴やコミュニケーションの傾向を理解することで、自らのリーダーシップを強化し、部下との関わり方を見直すきっかけにもなります。
社員像を実現する仕組みづくり
社員像が定まったら、次はその社員像を実現するための仕組みづくりです。
例えば、
- 採用でどんな人を採るのか
- 教育で何を身につけてもらうのか
- 評価で何を評価するのか
- 報酬をどう決めるのか
といった制度を整えていきます。
今回は詳細には触れませんが、こうした制度も長期人事計画の一部として考えていくことが重要です。
経営自走化との関係
経営自走化とは、経営者が現場にはりつかなくても会社が回る状態です。
そのためには、経営者が何でも抱え込むのではなく、必要な役割を担う人材が組織の中に存在している必要があります。
未来の組織図は、経営自走化した会社の完成形を描く作業とも言えます。
- どんな役割が必要なのか。
- その役割にはどんな能力や考え方が必要なのか。
- その人材をどう採用し、育成していくのか。
こうしたことを計画的に考えることが、人事戦略の第一歩です。
また、人事戦略を考えることで「経営者しかできない仕事」と「社員に任せられる仕事」の切り分けも見えやすくなります。
誰がどの役割を担うのかが明確になることで、組織としての再現性も高まっていきます。
まとめ
人事戦略というと、採用や評価制度をイメージする方も多いかもしれません。しかし本来は、経営戦略から考えるものです。
まずは「どんな会社を目指すのか」「そのためにどんな組織が必要なのか」「どんな人材が必要なのか」を考える。
そのうえで、採用、教育、評価、報酬といった制度を整えていく。
そんな順番で考えることで、人事戦略はより効果的なものになります。
まずは一度、3年後あるいは5年後の未来の組織図を描いてみてはいかがでしょうか。
