最近、
「売上はそこまで落ちていないのに、前より利益が残りづらい」
そう感じる場面が増えていないでしょうか。
例えば、
- 値上げしたいけど、競合が気になる
- 採用コストが上がる
- 広告費が前より効かない
- 求人を出しても人が来ない
- 価格比較されやすくなる
など、少し前までとは、経営環境がかなり変わってきています。
こうした時、多くの会社は「競合にどう勝つか」を考えます。
もちろん、それも重要です。
ただ実際には、利益を削っている要因は、競合だけとは限りません。
例えば、
- 特定顧客への依存
- GoogleやInstagramへの依存
- AIによる代替
- 価格比較サイト
- 人材不足
など、「競合以外」の影響で利益が削られているケースもかなり増えています。
今日は、利益を削る脅威の見つけ方というテーマで整理していきます。
孫子の考え方
こうした「競争」や「戦略」を考えるうえで、昔から多くの経営者に読まれてきた考え方があります。
それが、古代中国の兵法書『孫子』です。
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という言葉を聞いたことがある方も多いかもしれません。
『孫子』は、昔から多くの経営者やビジネスパーソンに読まれてきました。
理由はシンプルで、「戦争に勝つ」という考え方と「ビジネスで勝つ」という考え方に、共通点が多いからです。
ただ、「戦い」と聞くと、多くの人は「目の前の競合にどう勝つか」をイメージすると思います。
例えば「競争に勝つ」と聞くと、
- 競合より安くする
- 広告を大量に出す
- 営業人数を増やす
- 店舗数を増やす
- 価格競争を仕掛ける
といった、「目の前の競合をどう倒すか」をイメージする方も多いと思います。
実際、大規模資本を持つ企業ほど、
- 大量出店
- 大量広告
- 値下げ
- 囲い込み
- ポイント競争
のような「資本力を使った戦い方」をすることがあります。
そのため、中小企業が同じ土俵で真正面から戦ってしまうと、かなり厳しい戦いになることも少なくありません。
孫子が重視していた「戦わないこと」
ここで面白いのが、孫子の考え方です。
孫子は「どう勝つか」だけではなく、「そもそも戦わない方が良い」という考え方をかなり重視しています。
例えば、
- 勝てない戦いは避ける
- 不利な場所で戦わない
- 真正面からぶつからない
- 相手の強みを避ける
- 有利な場所を選ぶ
といった考え方です。
つまり「戦う前に、勝てる状況を作る」という発想です。
これは、今の企業経営でもかなり重要だと思います。
中小企業ほど「戦う場所」を選ぶ必要がある
例えば、価格競争が激しい市場で、
- 大手と同じ商品
- 大手と同じ売り方
- 大手と同じ顧客
を狙ってしまうと、どうしても消耗戦になりやすくなります。
一方で、
- 地域を絞る
- 顧客を絞る
- 提供方法を変える
- 複数サービスを組み合わせる
- 関係性を強くする
など、「戦う軸をずらす」ことで、競争を大きく変えられるケースもあります。
この部分を解説した記事がありますので、ぜひご一読ください。
本当に見るべきなのは、「競合」ではなく「利益を削る要因」
ただ、ここで注意したいのが、
「競合他社だけを見ても、経営リスクは見えない」
ということです。
例えば、会社の利益を削る要因には、
- 値下げ要求の強い顧客
- 特定仕入先への依存
- 代替サービス
- AI
- メーカー直販
- 価格比較サイト
- 求人難
- 人口減少
などもあります。
つまり、本当に見るべきなのは「競合」ではなく、「利益を削る脅威」なのです。
5 Forces分析は、「利益を削る力」を整理するためのもの
こういった「利益を削る脅威」を整理する考え方として有名なのが、「5 Forces分析」です。
名前だけ聞くと「なんだか難しそう…」と感じるかもしれません。
ただ実際には「どこから利益が削られる可能性があるのか?」を整理するためのシンプルな考え方です。
5 Forces分析というと、競合分析のフレームワークとして紹介されることが多いのですが、本来は「誰が自社の利益を削る可能性があるのか」を見るためのフレームワークなのです。
①既存競合〜今いる競合との競争〜
これは、多くの人がイメージしやすい「競合との戦い」です。
例えば、
- 近隣に同業他社が増える
- 価格競争が起きる
- 広告費競争になる
- 値下げ競争になる
などです。
美容院、整体院、士業、飲食店などは、特にこの影響を受けやすいです。
競争というと、多くの会社はまずここをイメージします。
ただ実際には、利益を削る要因は、これだけではありません。
②新規参入〜突然、別業界から競合が来る〜
これは、「今は競合ではない相手」が、将来的に競合になるケースです。
例えば、
- 大手企業が参入する
- FCが地域展開する
- 異業種が参入する
- IT化で参入障壁が下がる
などです。
昔は専門知識が必要だった業界でも、
- 予約システム
- EC
- AI
- SNS
などによって、小資本でも参入しやすくなっている業界もあります。
「昔は守られていた市場」が、急に競争市場になることもあるのです。
③顧客〜顧客の力が強すぎる状態〜
ここは、見落としやすいポイントです。
これは、「お客様側の力」が強くなりすぎている状態です。
例えば、
- 大口顧客への依存
- 値下げ要求
- 相見積もり
- 価格比較サイト
- 「他社はいくらだった」
などです。
顧客側の力が強くなると、価格決定権を失いやすくなります。
例えば、
- 売上の50%を1社が占めている
- 特定取引先への依存度が高い
場合、「断られたら困る」ので、値下げ要求を受け入れやすくなります。
これはかなり危険な状態です。
④仕入先〜実は、自社より強い存在に依存している〜
これは、「自社が依存している相手の力が強すぎる状態」です。
例えば、
- 特定メーカーしか扱えない
- 原材料高騰
- 仕入価格上昇
- ITシステム依存
- プラットフォーム依存
などです。
最近だと、
- Amazon
- 求人媒体
などへの依存も、かなり大きくなっています。
例えば、Google検索順位が落ちた瞬間、問い合わせが激減する会社もあります。
Instagramのアルゴリズム変更で、急に反応率が落ちるケースもあります。
つまり「集客の主導権を、自社ではなく外部プラットフォームが握っている」状態です。
これは、ある意味で「仕入先の力が強い状態」に近いとも言えます。
⑤代替商品〜本当の競合は“別の解決方法”かもしれない〜
これは、「同業他社以外」が競合になるケースです。
例えば、
- AI
- セルフサービス
- YouTube
- ChatGPT
- 動画教材
- サブスク
などによって「今まで人に頼んでいたことを、自分でできる」ケースが増えています。
例えば士業でも「専門家に相談する」ではなく、「まずAIで調べる」という行動に変わる可能性があります。
美容院でも、セルフカラーや美容家電が代替になることがあります。
つまり「同業他社」ではなく、「顧客の行動変化」が脅威になるケースもある、ということです。
中小企業は、“競合”よりも“構造変化”で苦しくなることがある
特に中小企業の場合「競合に負ける」よりも、
- 1社依存
- 求人媒体依存
- Amazon依存
- Google依存
- 特定人材依存
- プラットフォーム依存
など「構造変化」によって苦しくなるケースも少なくありません。
「競合を見る」だけではなく、「利益を削る脅威を見る」という視点が重要になります。
経営戦略とは、「どこで戦うか」を決めること
経営戦略というと「どう勝つか」に意識が向きやすいですが、実際には、
- どこで戦うのか
- 誰と戦うのか
- 何を避けるのか
- 何を捨てるのか
を決めることも、同じくらい重要です。
そしてその判断のためには、「いま自社の利益を削っているものは何か?」を冷静に整理する必要があります。
もし最近、
- 利益率が下がっている
- 値上げが難しい
- 価格競争が激しい
- 採用が厳しい
- 競争がしんどい
と感じている場合は、「競合分析」だけではなく、「利益を削る脅威」という視点で、一度整理してみると、見え方が変わるかもしれません。
経営自走化との関係
こうした「利益を削る脅威」を見落としていると、会社は少しずつ苦しくなっていきます。
例えば、
- 値下げ要求が強くなる
- 採用コストが上がる
- 広告依存が強くなる
- 特定顧客への依存が高まる
などによって、利益率が下がっていきます。
すると、そのしわ寄せは、最終的に経営者へ集中しやすくなります。
例えば、
- 利益を埋めるために、経営者が現場へ入る
- 採用できないので、自分で対応する
- 値下げ分を、長時間労働で埋める
- 人が辞めるので、経営者がフォローする
などです。
つまり「利益を削る脅威」を放置すると、経営者が現場から抜けられなくなりやすいのです。
逆に言えば、
- 誰と付き合うのか
- どこで戦うのか
- 何に依存しすぎないのか
を整理することは、利益率だけではなく、「会社が自走しやすい状態」を作ることにもつながっていきます。
まずはAIを使って、「利益を削る脅威」を洗い出してみる
とはいっても、
「自社にどんな脅威があるのか、なかなかイメージが湧かない」
という方も多いと思います。
そんな時は、AIを使って整理してみるのもおすすめです。
例えば、
- 会社HP
- 会社案内
- サービス内容
- 顧客情報
- 業界情報
などを、できるだけ詳しくAIに伝えたうえで、
「自社には、5 Forcesの観点でどのような脅威がありますか?できるだけ具体的に20個出してください」
と聞いてみます。
すると、自分では当たり前になっていて、気づけていなかったことがリスクとして出てくることがあります。
もちろん、全部が当てはまるわけではありませんが、その中で「これ、ちょっと危ないかも」と思うものが、1つか2つ出てくることがあります。
そしたら次は「どう対策するか」を考えていきます。
例えば、
- 顧客を分散する
- 値上げできる状態を作る
- 依存先を減らす
- 採用以外の方法を考える
- 自社ブランドを強くする
などです。
経営戦略というと、難しく感じることもありますが、実際には「利益を削る脅威を減らす」という視点で考えると、整理しやすくなることも多いと思います。
