社員一人ひとりの仕事を会社の目標達成につなげる、定量評価のつくり方

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前回は、社員に求める仕事や能力、成果、責任の水準を段階に分けた「等級制度」について説明しました。

等級を設定することで、それぞれの社員にどのような役割を求めるのか、何ができれば次の等級へ上がれるのかが明確になります。

その結果、社員は自分が目指すべき次の段階を理解し、会社も役職や給与を決める基準を明確にできます。

等級を設定したら、次に必要なのが評価項目をつくることです。

評価項目とは、社員の成果や行動、能力などを、どのような基準で評価するのかを具体的に示したものです。

評価項目づくりは何のために必要?

評価項目には、大きく2つの役割があります。

昇進・昇給につながる成果や行動を明確にする

1つ目は、社員に対して、どのような成果や行動が評価され、何ができれば昇進・昇給につながるのかを示すことです。

等級制度が示すのは、それぞれの段階で社員に求める仕事や能力、成果、責任の水準です。

これに対して評価項目は、社員が現在の等級で求められる水準を満たしているか、次の等級へ進める状態にあるかを判断するための具体的な基準です。

たとえば、等級制度で「一人で営業活動を進め、安定した成果を上げられる人材」と定めていても、それだけでは何をもって安定した成果と判断するのかが分かりません。

そこで、売上や粗利益、成約数などの評価項目を設定し、どの水準まで達成すれば評価されるのかを明確にします。

評価項目が明確になっていなければ、社員は何を目指して仕事に取り組めばよいのか分かりません。

また、評価する上司によって判断基準が変わり、評価に対する納得度が下がる可能性もあります。

会社・部門・個人の目標を一気通貫でつなげる

2つ目は、会社全体の目標と、部門や個人の目標を一気通貫でつなげることです。

個人が努力して成果を上げても、それが会社の目指す方向とずれていれば、会社全体の目標達成にはつながりません。

たとえば、営業担当者が売上を伸ばしていても、値引きによって粗利益率が低下していれば、会社に必要な利益を残せないことがあります。

評価項目を通じて、会社の目標を部門、個人へ落とし込むことで、個人の努力や成果が部分最適になることを防ぎます。

評価項目の全体像

評価項目は、大きく「定量評価」と「定性評価」に分かれます。

定量評価は、売上や営業利益、契約数、採用人数など、数字で達成度を確認できる成果を評価するものです。

会社全体の目標を部門目標、個人目標へと順番に落とし込みます。

一方、定性評価は、数字だけでは確認できない、仕事への取り組み方や、業務に必要な知識・スキルなどを評価するものです。

定性評価は、次の3つに分かれます。

  • リーダーシップ
    仕事に取り組む姿勢や、会社のコアバリューに沿った行動などを評価します。
  • ソフトスキル
    目標管理や時間管理、業務改善、社員教育、報告・連絡・相談など、職種を問わず仕事を進めるうえで必要となる能力を評価します。
  • ハードスキル
    各部門の業務に必要な専門知識、資格、実務経験などを評価します。

社員の成果を適切に評価するためには、数字で確認できる成果だけでなく、その成果を生み出すための姿勢やスキル、専門性も見る必要があります。

今回は、このうち定量評価について、具体的な会社の事例を使って説明します。

定量評価とは

定量評価とは、売上、利益、契約数、採用人数、離職率、実施回数など、数字で達成度を確認できる項目によって評価する方法です。

「売上を伸ばす」「採用を強化する」といった曖昧な表現ではなく、「売上5億5,000万円」「若手営業社員を3名採用する」のように、達成したかどうかを数字で判断できる形にします。

定量評価をつくる際、個人の売上や活動件数など、社員一人ひとりの目標から先に決めてしまうことがあります。

しかし、個人の定量目標だけを先に決めるのは適切ではありません。

個人目標は、会社全体の目標を達成するために、各部門と個人が何を担うのかを順番に落とし込んで設定するものだからです。

そのため、定量評価を設定するには、会社全体の定量的な目標を示した事業計画が必要です。

事業計画がなければ、部門や個人にどのような成果を求めるべきかを判断できません。

もし、会社の売上や利益などの目標がまだ明確になっていない場合は、評価項目をつくる前に、事業計画を作成する必要があります。

全社目標とのつながりがないまま個人目標を設定しても、社員の努力が会社の目標達成につながらない評価制度になってしまいます。

ここからは、ある会社の事例を使って、全社目標を部門目標、個人目標へ落とし込む方法を説明します。

全社目標の具体例

まずは、会社全体で目指す目標を設定します。

たとえば、今期の着地見込みが売上5億円、営業利益2,500万円、営業利益率5%の会社が、来期は次の目標を掲げたとします。

  • 売上:5億5,000万円(今期見込みから5,000万円増)
  • 営業利益:3,850万円(今期見込みから1,350万円増)
  • 営業利益率:7%(今期見込みから2ポイント増)

全社目標は、売上だけでなく、利益も含めて設定することが重要です。

売上を伸ばしながら、会社にどれだけ利益を残すのかを明確にします。

次に、この全社目標を達成するために、各部門が担う目標へ落とし込みます。

今回は、売上を直接つくる営業部門と、会社を支える間接部門である人事部門を例に、部門目標と個人目標の設定方法を説明します。

営業部門目標の具体例

営業部門の目標は、会社の事業内容や営業方針によって異なります。

ここでは一例として、売上5億5,000万円を、既存顧客と新規顧客に分けて考えてみます。

この会社では、事業計画をつくる際に、来期の売上目標5億5,000万円のうち、4億5,000万円を既存顧客から確保し、残りの1億円を新規顧客から獲得する計画を立てました。

これまでの販売データを確認すると、既存顧客の客単価は100万円、新規顧客は80万円でした。

そのため、売上目標を達成するには、既存顧客450社からの受注と、新規顧客125社の獲得が必要になります。

さらに、この会社では、売上だけを追うことで値引きや粗利益率の低い案件が増えることを防ぐため、成約時の粗利益も目標に設定することにしました。

過去の受注データから、既存顧客の粗利益率を30%、新規顧客を25%に設定した場合、営業部門の目標は次のようになります。

  • 既存顧客:売上4億5,000万円、成約時の粗利益1億3,500万円
  • 新規顧客:売上1億円、成約時の粗利益2,500万円

この例では、営業部門が売上5億5,000万円と、成約時の粗利益1億6,000万円に責任を持つ設計です。

営業部門の目標には、売上や粗利益のほか、契約数、継続率、重点商品の販売数などを設定する方法もあります。

自社の課題や営業方針に合わせて、営業部門に何を求めるのかを明確にすることが大切です。

営業担当者の個人目標の具体例

次に、営業部門の目標を、営業担当者の個人目標へ落とし込みます。

ただし、部門目標を人数で均等に割り振るのは適切ではありません。

前回説明した等級に基づき、それぞれに求める能力や役割、責任に応じて、個人目標の重さを変えます。

前回は、等級の例として、試用期間、レベル1、レベル2、レベル3、係長、課長、部長に加えて、管理職ではなく専門性を高めて会社に貢献するスペシャリストを紹介しました。

スペシャリストは、部下の管理を担うのではなく、高い専門性を発揮して成果を上げる役割です。

今回の例では営業職を取り上げているため、高い営業力や専門知識を発揮し、営業成果で会社に貢献する人材として位置づけます。

今回の営業部門には、レベル1が3人、レベル2が3人、レベル3が3人、スペシャリストが1人、係長が1人いるとします。

この会社では、各等級に求める役割や、管理業務と営業活動のバランスについて議論した結果、個人目標の重さを次の順で設定することになりました。

レベル1 < レベル2・係長 < レベル3 < スペシャリスト

レベルが上がるほど、より高い営業成果を求めます。

スペシャリストには、営業の専門性を発揮する役割として、最も高い個人目標を設定します。

さて、この会社では、係長をスペシャリストと同等の等級に位置づけています。

ただし、係長は部下の育成や目標管理も担うため、個人の営業目標はレベル2と同程度に抑えました。

課長や部長は部門全体の成果に責任を持つため、原則として個人の営業目標は設定しません。

個人目標には、売上、成約時の粗利益、既存顧客の成約数、新規顧客の成約数、既存顧客への顧客への見積り数、新規顧客への見積り数などを設定します。

売上や粗利益、成約数は最終的な成果です。

一方、見積り数は成約につながる途中成果です。

最終成果だけでなく途中成果も設定することで、目標未達の原因が、営業活動の不足にあるのか、見積り後の成約率にあるのかを確認しやすくなります。

たとえば、レベル2の営業担当者1人当たりの個人目標は、次のように設定します。

  • 売上:4,880万円
  • 成約時の粗利益:1,420万円
  • 既存顧客の成約数:40件
  • 新規顧客の成約数:11件
  • 既存顧客への見積り数:45件
  • 新規顧客への見積り数:110件

この会社では、過去の営業実績から、見積り後の成約率が既存顧客では約90%、新規顧客では約10%でした。

そのため、既存顧客40件の成約には年間約45件、新規顧客11件の成約には年間110件の見積りが必要だと逆算しています。

このように、部門目標を達成するために必要な成果を逆算したうえで、各等級の役割や力量、管理業務とのバランスについて議論し、個人目標を割り振ります。

人事部門目標の具体例

次に、人事部門の目標を考えてみます。

この会社では、事業計画をつくる段階で、全社目標を達成するために解決すべき人事・組織上の課題として、次の3つが挙がりました。

  • 社員の平均年齢が上昇しており、将来の営業体制を維持するために若手社員を採用・育成する必要がある
  • 入社5年から10年の中堅社員の離職率が高く、将来の管理職候補が不足している
  • 営業担当者が資料作成やHPの更新などに時間を取られ、顧客とのやり取りに十分な時間を使えていない

そこで、この会社では、人事部門の目標を次のように設定しました。

  • 若手営業社員を3名採用する
  • 入社5年から10年の社員の離職率を15%から8%へ下げる
  • 営業事務を1名採用・配置し、営業担当者の事務作業時間を月20時間削減する

営業資料の作成やHPの整備は、採用した営業事務が担う業務です。

人事部門は、そのために必要な人材の採用や配置、育成に責任を持ちます。

人事部門のように売上を直接つくらない部門では、全社の売上目標を単純に割り振ることはできません。

事業計画を実行するうえで障害となる人事・組織上の課題を明確にし、その解決に必要な成果を部門目標として設定します。

人事スタッフの個人目標の具体例

この会社の人事部門には、2名のスタッフがいます。

そこで、採用と定着・育成に主担当を分け、それぞれの個人目標を設定することになりました。

採用担当者の個人目標は、次のとおりです。

  • 若手営業社員を3名採用する
  • 営業事務を1名採用する
  • 年間80名の応募者を集める
  • 年間32名の採用面接を実施する
  • 採用した社員の入社後3か月以内の離職を0名にする

この会社では、これまでの採用実績から、応募者の40%が面接に進み、面接者の12.5%が入社していました。

そのため、4名を採用するために必要な応募者数を80名、面接数を32名と設定しています。

定着・育成担当者の個人目標は、次のとおりです。

  • 入社5年から10年の社員の離職率を15%から8%へ下げる
  • 対象社員全員と半年に1回、年間2回の面談を実施する
  • 面談で把握した課題に対する改善策を年間4件実行する
  • 若手営業社員3名の育成計画を入社後1か月以内に作成する
  • 若手営業社員向けの研修を年間12回実施する

採用人数や離職率といった最終成果だけでなく、応募者数や面接数、面談回数、改善策の実行件数、研修回数などの途中成果も個人目標に設定します。

これにより、最終成果が目標に届かなかった場合も、必要な活動量を確保できていたのか、実施した取り組みが成果につながっていたのかを分けて確認できます。

定量評価と経営自走化の関係

経営自走化とは、経営者が現場にはりつかなくても、社員が会社の目標を理解し、自ら判断して行動できる状態をつくることです。

しかし、会社の目標が経営者の頭の中にしかなく、社員に求める成果も明確になっていなければ、社員は何を基準に行動すればよいのか分かりません。

その結果、目の前の業務を一生懸命にこなしていても、会社全体の目標とつながらない部分最適な行動が増えてしまいます。

全社目標を部門目標、個人目標へ落とし込むことで、それぞれの社員が、自分の仕事が会社の目標達成にどのようにつながっているのかを理解できるようになります。

また、最終成果だけでなく途中成果も設定しておけば、上司は結果が出るまで待つのではなく、進捗を確認しながら必要な支援や軌道修正を行えます。

社員自身も、目標に対して何が不足しているのかを確認し、次に取るべき行動を考えやすくなります。

定量評価は、社員を数字だけで管理するためのものではありません。

会社が目指す姿と、一人ひとりが日々取り組む仕事をつなぎ、社員が自ら目標を管理できる状態をつくるための仕組みです。

こうした仕組みを整えることが、経営者だけが目標を追いかける組織から、社員一人ひとりが会社の目標達成に責任を持つ組織への転換につながります。

まとめ

今回は、評価項目のうち、定量評価の設定方法について説明しました。

定量評価は、個人の売上目標や活動件数だけを決めればよいものではありません。

まず、事業計画に基づいて会社全体の売上や利益などの目標を設定します。

次に、その目標を達成するために各部門が担う成果を明確にし、最後に部門目標を個人目標へ落とし込みます。

営業部門のように売上を直接つくる部門では、売上や粗利益、成約数などを全社目標から逆算できます。

一方、人事部門のような間接部門では、事業計画の実行を妨げる課題を明確にし、その解決に必要な採用人数や離職率、面談回数などを目標に設定します。

また、売上、採用人数、離職率などの最終成果だけでなく、見積り数、応募者数、面談回数などの途中成果も設定することが重要です。

会社、部門、個人の目標を一気通貫でつなげることで、社員は自分に求められている成果と、その成果が会社の目標達成にどのようにつながるのかを理解できます。

ただし、社員の仕事は数字だけで評価できるものではありません。

次回は、仕事への取り組み方や、業務に必要な知識・スキルなどを評価する定性評価のつくり方について説明します。