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「社員が同じ方向を向いてくれないんだよね…」
経営者同士で情報交換をしていると、そんな話題になることは少なくありません。
詳しく話を聞いてみると、
「指示したことが徹底されない」
「社員同士で意見がぶつかる」
「何を考えているのか分からない社員がいる」
「自分が全部判断しないと仕事が進まない」
など、会社によって状況はさまざまです。
こうした話題になると、経営者仲間やコンサルタントから、さまざまなアドバイスを受けることがあります。
「もっと強くリーダーシップを発揮した方がいい」
「もっと社員の話を聞いた方がいい」
「もっと権限を委譲した方がいい」
「もっと管理を徹底した方がいい」
上記は一見すると、正反対のように感じますよね。
では、どれが正しいのでしょうか?
実は、これらは必ずしも矛盾しているわけではありません。
チームの成長段階によって、求められるリーダーの役割が変わるからです。
今回は、チームの成長段階を整理した代表的な考え方である「タックマンモデル」をご紹介します。
タックマンモデルとは
タックマンモデルとは、1965年にアメリカの心理学者ブルース・W・タックマンが提唱した、チームの成長過程を整理したモデルです。
チームは時間の経過とともに成長し、その段階ごとに課題や必要なリーダーシップが変わるという考え方で、現在でも多くの企業やプロジェクトマネジメントの現場で活用されています。
一般的には、次の4つの段階で整理されます。
- Forming(形成期)
- Storming(混乱期)
- Norming(統一期)
- Performing(機能期)
例えば、新しい部署を立ち上げたときや、新任の管理職が着任したとき、あるいはプロジェクトチームを発足させたときなどは、ほとんどの場合がFormingからスタートします。
そして、何の問題もなく一気にPerformingまで進むことはほとんどありません。
途中で意見の対立や混乱を経験しながら、少しずつ成熟していくのです。
Forming(形成期)
チームが立ち上がったばかりの段階です。
メンバーは期待を持つ一方で、
「どんな人たちなんだろう」
「どんなルールで仕事をするんだろう」
「このリーダーは信頼できるのだろうか」
という不安も抱えています。
この段階では、お互いに遠慮していることも多く、大きな問題は表面化しません。
しかし、それはチームがうまくいっているというよりも、まだ本音が出ていない状態とも言えます。
この時期に重要なのは、いきなり組織図や役割分担を決めることではありません。
まずはメンバー一人ひとりを知り、現状を正しく把握することです。
例えば、
- 今の仕事で困っていることは何か
- チームの強み・弱みをどう考えているか
- チームワークを改善するには何が必要だと思うか
- もし自分がリーダーだったら、何を優先するか
といった内容を個別にヒアリングすることで、それぞれの考え方や価値観、チームが抱える課題が見えてきます。
メンバーを理解したうえで、
- チームの目的
- ビジョン
- 役割分担
- ルール
を明確に示し、チームの土台をつくっていきます。
この段階では、リーダーが方向性を明確に示すことが重要な役割になります。
Storming(混乱期)
チームが動き始めると、少しずつ本音が出てきます。
- 仕事の進め方に対する考え方の違い
- 「それは違うと思います」という意見
- 責任の押し付け合い
時には、リーダーへの不満が表面化することもあります。
経営者からすると「せっかくチームを作ったのに、前より雰囲気が悪くなった」と感じることもあるでしょう。
しかし、これは決して悪いことではありません。
むしろ、お互いの考え方が見えるようになったからこそ起こる、自然な成長過程です。
この段階で、リーダーが独断的に物事を決め続けてしまうと、メンバーは受け身になり、チームの成長は止まってしまいます。
求められるのは、意見の対立を避けることではなく、対話を通じて建設的な議論へ導くことです。
時には権限を少しずつ委譲しながら、メンバーを巻き込み、一緒に課題を解決していく姿勢が重要になります。
Norming(統一期)
混乱を乗り越えると、チームとしてのルールや価値観が共有され始めます。
「あの人はこういう考え方なんだ」「この仕事はこの人に任せれば大丈夫」と、お互いへの理解も深まっていきます。
この段階になると、リーダーが細かく指示を出さなくても、ある程度はメンバー同士で判断できるようになります。
ここで重要になるのは、少しずつ権限を委譲し、メンバーが自ら考え、判断し、行動できる環境を整えることです。
いつまでもリーダーが細かな判断を続けていると、せっかく育ち始めた主体性を奪ってしまうことにもなりかねません。
Performing(機能期)
チームが十分に成熟すると、それぞれが自分の役割を理解し、自律的に成果を生み出せるようになります。
問題が起きても、まずはチーム内で解決策を考え、改善まで進められるようになります。
この段階では、リーダーがすべてを判断する必要はありません。
リーダーの役割は「指示を出す人」から、「チームが成果を出しやすい環境をつくる人」へ変わります。
必要に応じて相談に乗り、障害を取り除き、メンバーが力を発揮できる環境を整えることが中心になります。
成長段階によって、リーダーの役割は変わる
ここまで見ていただくと分かるように、チームの成長段階によって、リーダーに求められる役割は大きく変わります。
Forming(形成期)
メンバー一人ひとりを理解し、チームの目的やビジョン、ルールを明確に示します。チームが安心してスタートできる土台をつくることが、この段階での役割です。
Storming(混乱期)
意見の対立や衝突を避けるのではなく、対話を通じて建設的な議論へ導きます。独断ではなく、メンバーを巻き込みながらチームを育てていくことが重要になります。
Norming(統一期)
チームのルールや価値観が定着してきたら、少しずつ権限を委譲します。メンバーが自ら考え、判断し、行動できる機会を増やすことで、自律性を育てていきます。
Performing(機能期)
リーダーは細かな指示を出すのではなく、支援やコーチング、環境整備を中心に行います。メンバーが最大限の力を発揮できる状態を維持することが役割になります。
このように「もっと厳しくした方がいい」というアドバイスも、「もっと任せた方がいい」というアドバイスも、チームの成長段階によってはどちらも正しいのです。
他社でうまくいった方法をそのまま取り入れても、自社では成果が出ないことがあるのは、この違いがあるためです。
まずは、「今の自分たちのチームはどの段階にいるのか」を見極めることが、チームビルディングの第一歩になります。
経営自走化との関係
経営自走化も、一足飛びに実現できるものではありません。
まずは、会社の目的やビジョン、ミッションを共有し、組織図や役割分担、ルールを整備します。
そのうえで、計画的に権限を委譲し、社員が自ら判断し、改善できる範囲を少しずつ広げていきます。
組織づくりには時間がかかります。
しかし、場当たり的に取り組むのではなく、チームの成長段階を意識しながら計画的に進めることで、結果として経営自走化の実現スピードは早まります。
最終的に目指すのは、経営者が細かな指示を出さなくても、社員同士で課題を発見し、改善し、成果を出せる組織です。
まとめ
「もっと厳しくした方がいい」
「もっと任せた方がいい」
どちらが正しいのか。
その答えは、一つではありません。
チームには成長段階があり、それぞれの段階で必要なリーダーシップは変わります。
強いリーダーとは、常に厳しい人でも、常に優しい人でもありません。
チームの成長段階を見極め、その時々に必要な関わり方へ変化できる人です。
もし今「社員が同じ方向を向いてくれない」と感じているのであれば、社員一人ひとりを変えようとする前に、チームが今どの段階にあるのかを見つめ直してみてはいかがでしょうか。
その視点を持つことが、強いチームづくり、そして経営自走化への第一歩になります。
