「時間ができたらやります」
経営者の方と話していると、この言葉をよく耳にします。
事業計画の見直し、組織体制の再設計、財務の分析。
どれも重要だと分かっている。
けれど、目の前の仕事に追われ、つい後回しになってしまう。
その積み重ねが、気づかないうちに会社の成長を止めていることがあります。
では、どうすればよいのでしょうか。
そのヒントとして、前回は
「他人との約束」と「自分との約束」という切り口で、
時間を整理する考え方をご紹介しました。
具体的には、
カレンダーを使った時間管理と、
自分と他者が関わる予定である
「イベント」の管理方法についてお伝えしました。
この2つを徹底することで、
他人との約束、特に他人に依頼したことを忘れてしまう、
といったミスはほぼ起こらなくなります。
※前回の記事はこちらからご覧いただけます。
そして今回は、
「自分との約束を守る方法」
について整理します。
経営者が自分自身に約束すべき仕事は?
自分との約束とは、
第2領域(緊急ではないが重要な仕事)
にある仕事のことです。
たとえば、経営者にとっての第2領域の仕事には、
次のようなものがあります。
- 中長期の事業計画づくり
- 財務数値の分析と改善策の検討
- 組織体制の見直しや権限移譲の設計
- 幹部育成や評価制度の整備
- 新規事業の構想や商品・サービスの磨き込み
- 重要な顧客との関係構築
- 自分自身の視座を高める学習の時間
いずれも、会社の未来をつくる仕事です。
しかし、これらの仕事は慣れていないと、
なかなか手がつきません。
なぜなら、現場の仕事に慣れていると、
現場の仕事の方が楽であり、
何より「やった感」があるからです。
電話に出る、メールを返す、見積もりをつくる、
目の前の依頼に対応する。
これらは即座に反応があり、達成感も得られます。
一方で、第2領域の仕事は、
成果が出るまでに時間がかかり、
手応えも感じにくい仕事です。
しかし、こうした第2領域の仕事を行わないと、
常にトラブル対応や締め切り対応に追われる状態になり、
緊急かつ重要な仕事ばかりに振り回される経営になります。
結果として、
「忙しいのに前に進んでいない」
という思いで、徐々に経営者は疲弊していきます。
まずは「第2領域の仕事に時間を割くと決める」こと
まずは精神論のように聞こえるかもしれませんが、
「第2領域の仕事に時間を割く」と決めることが、最初の一歩です。
昨日と同じことをやれば、今日は昨日と同じになります。
今日と同じことをやれば、明日も今日と同じです。
現場対応や緊急業務だけに時間を使い続けている限り、
会社の未来は大きくは変わりません。
それを避け、会社をより良くしていくためには、
第2領域の仕事にしっかり取り組む、というマインドセットが重要です。
時間ができたらやる、ではなく、
時間をつくってでも取り組む、と決める。
ここが、自分との約束を守るための出発点になります。
第2領域の時間をどう確保するか
第2領域の仕事は、隙間時間ではうまくできないことが多いです。
人間は、ひとつのことに集中し始めるまでに、
15分~20分はかかると言われています。
つまり、1時間のうち、実際に深く集中できる時間は
40~45分程度ということです。
だからこそ、第2領域の仕事を行うには、
最低でも1時間30分~2時間を確保することをお勧めします。
とはいえ、途中で電話、チャット、メール、
SNS、急な来客、スタッフからの相談などの割り込みが発生すると、
再び集中するまでに、また15〜20分かかってしまいます。
そうすると、いくら2時間確保したとしても、
思ったほど進まない、ということになります。
デフォルトスケジュールという考え方
そこでお勧めするのが、
「デフォルトスケジュール」という考え方です。
デフォルトスケジュールとは、
自分の時間の使い方をあらかじめカレンダーに登録し、
その時間をブロックしておく、という考え方です。
一般的には、思考・教育・学びの時間は朝がお勧めと言われます。
ただし、これは各自の体質にもよるため、絶対ではありません。
重要なのは、「まとまった時間を確保する」ことです。
また、メールやチャットのチェックも、
都度対応するのではなく、時間をまとめて行う方が効率的です。
もし朝に思考の時間を確保するのであれば、
午後は会議、交渉、オペレーションなどに充てる、
という時間設計をしてみましょう。
具体的なイメージは、たとえば次のような形です。
- 8:30-9:00:メールなどのチェックと返信、電話の折り返し
- 9:00-10:30:第2領域の仕事に取り組む時間
- 10:30-11:00:メールなどのチェックと返信、電話の折り返し
- 11:00-12:00:決裁書類のチェック
- 12:00-13:00:ランチタイム
- 13:00-14:00:予備時間
- 14:00-15:30:社内会議、取引先訪問などに使える時間
- 15:30-16:00:メールなどのチェックと返信、電話の折り返し
- 16:00-17:30:社内会議、取引先訪問などに使える時間
また、第2領域の仕事に取り組む時間には、
毎週金曜日の最後、1日の始まりか終わりなど、
定期的なタイミングで「何をやるのか」を
補足で入力しておくと効果的です。
電話は「今すぐ」対応する必要があるのか
ここで気になるのが、メールやチャットはさておき、電話です。
電話は「すぐに折り返さないといけない」と思いがちです。
特に社外からの電話はそう感じるかもしれません。
しかし、ここで過去1か月を振り返ってみてください。
「すぐに折り返さないと重大な問題になる電話」は、
どれくらいあったでしょうか。
2時間後に
「打ち合わせに入っておりまして」
と前置きして折り返したとして、
本当に問題になるでしょうか。
多くの場合、答えはNoです。
万が一Yesであれば、チェックタイムを90分に1回に増やせばよいだけです。
ちなみに、これを全社的に取り組む考え方が「集中タイム」です。
集中タイムとは、たとえば
「10時~12時は会議も電話も原則NG」と会社でルール化する考え方です。
これは生産性向上に効果的ですが、
すべての部門、すべての役職、すべての職種にフィットするとは限りません。
スムーズに運用するためには、
集中タイムを適用している部署を明確にし、
その時間帯はその部署への連絡や、
その部署を含む会議は、部署側が拒否してもOK、
というルールにしておくとよいでしょう。
デフォルトスケジュールの作り方
まずは、週のデフォルトスケジュールを作ってみましょう。
①縦軸に就業時間を30分刻みで分割し、横軸に月~金(もしくは土日も含める)の表を作る
②まずは第2領域の仕事に使う時間を入れる
③次にメールやチャット、電話のチェックと対応時間を入れる
④残りの時間に各部門との定例会議を入れる
⑤それをカレンダーに登録する
上記に含まれない得意先の訪問や、部下との面談などは、
ブランクにしておいても構いませんし、
あらかじめ枠だけ確保して、具体的な相手を後から当てはめていく形でも問題ありません。
まずは最低限、②~④を設定してみてください。
自分との約束を守れるかどうかは、
意志の強さだけではなく、事前の準備も重要です。
今回のまとめ
- 第2領域の仕事は、会社の未来をつくる仕事であること
- まずは「第2領域の仕事に時間をさく」と決めること
- 隙間時間ではなく、まとまった時間を確保する必要があること
- デフォルトスケジュールという設計で、自分との約束を守ること
- 意志だけでなく、準備の精度で結果が変わること
時間管理は、精神論ではなく、設計論です。
ぜひ一度、ご自身の1週間を棚卸ししてみてください。
「第2領域の時間を、今週は何時間確保するのか」
まずはそこからです。
